いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。



小さな声で言ったつもりだったのに、やけに静まり返っているこの部屋の中では思っていたより声が大きく響いた。


春斗がこっちを向いたのが、気配で感じ取れる。


「そ、そっちに……行っても、いい……?」


恥ずかしくて、春斗から目を逸らしたままそう聞いてみる。


緊張しているせいで、声がわずかに震えた。


「……ダメ、かもしれない」

「え?」

「ってか、ダメ……」


返ってきたのは、“ダメ”の二文字。


なんだか自分の気持ちを否定されたみたいに思えて、勢いあまって大胆なことを口走っちゃった自分が酷く惨めに思えて。


じわりと瞳に涙が滲んだけど、それを春斗に知られないように私はわざと明るく言った。


「そ、そうだよね!ダメだよね……。なんか、変なこと言っちゃってごめんね?」


って。