いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。



だって、もし理由がバレちゃったりしたら、恥ずかしいもん。


言えるわけないじゃんね。


“春斗と一緒にお風呂に入ってるところを想像したら、とってもドキドキしちゃいました”なんて。


春斗だってきっと、私がそんなこと言ったら、びっくりしちゃうと思うし。


「は、春斗。温泉は別々に入ろうよ。私もゆっくりしたいしさ、春斗もゆっくりしたいでしょ?」


キャリーバックからお風呂セットを取り出しながら、私は春斗を見た。


春斗は、笑っていた。


でもそれは春斗が楽しいときや嬉しいときに見せてくれる笑顔じゃなくて。


どことなく悲しそうで、寂しそうで。


少し触れると、ぼろぼろと崩れ落ちてしまいそうなくらい儚げな笑顔だった。