いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。



「これでもまだ、俺のこと嫌い?」


イタズラな笑みを浮かべて、私にそう言った春斗。


そこでやっと気付く。


春斗は、私が怒っている“ふり”をしていたことに気付いていたんだということに。


とはいえ、突然の出来事にまだドキドキが鳴り止まない。


だって春斗、ここ水族館だよ?


私たち以外にも、人がいっぱいいるんだよ?


そっと周りに視線を向けるけど、幸い私たちがキスをしたことに気付いている人はいないみたい。


「……春斗のバカ」


私はそう呟いて、春斗の胸にボフッと顔を埋めた。


それは、私なりの精一杯の照れ隠し。


私の背中に、春斗の大きな腕がまわる。


「ねぇ、ママ。あのお兄ちゃんとお姉ちゃん、ママとパパみたいに仲良しさんなの?ぎゅーってしてるよ?」


小さな女の子の声が耳に入ったけど、私は気にせずに春斗のシャツをぎゅっと握りしめた。