私の様子がおかしいことに気付いたのか、春斗が震える声で私に問いかける。
「心咲……もしかして、こいつのこと忘れたの……?」
私はその問いかけに首を横に振ることも頷くこともせず、ポツリと呟いた。
「……顔は分かるのに、名前が出てこないの……。なんで……っ、なんで……」
悔しくて、悲しくて、つらくて。
生まれて初めて、もういっそのこと死んでしまいたいと思った。
彼女は私の言葉を聞いて、ポロポロと涙をこぼし始める。
そんな彼女を、蒼くんが優しく抱きしめた。
「心咲、ちゃ……っ。仁奈、だよ……っ?」
「に、な……」
「心咲ちゃんの友達の、仁奈……っ」
泣きじゃくりながら、必死にそう繰り返す彼女。



