そして痛みが引いていくのと同時に、私の中の大切な記憶がグッと引き出されていくような、そんな気がした。
「心咲、大丈夫?」
気付けば、その場にしゃがみこんだ私の目の前には不安そうな春斗がいて。
「大、丈夫……」
そう返事をするのが精一杯だった。
「心咲ちゃんっ!大丈夫?立てる?」
春斗に続くように、泣きそうになりながら私の背中をさすってくれるのは……。
「……」
どうしよう……。
“うん、大丈夫だよ。ありがとう”って、そう伝えたいのに、何も言えない。
だって、彼女の名前が出てこない。
「……っ」
私は彼女の瞳を見ていられなくなって、そっと視線をそらした。



