春斗の胸の中でそっとそれを聞いていたら、突然、春斗の腕が私の背中に回された。
「……できるわけないじゃん」
「は?」
「心咲を捨てるなんて、そんなことできるわけない。だって、こんなにも好きなのに」
そう言って春斗は、私の背中に回した腕をぎゅっと強くする。
「病気なんて、俺にとっては関係ないし、どうでもいい。心咲が今までの記憶を全部忘れたとしても、心咲が心咲であることには変わりないんだから」
私の頬に、暖かいしずくが何粒も何粒も流れた。
舌打ちをして、グチグチと文句を言っている瑠希の声がする。
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