「感謝じゃなくて、愛情がほしかったんだけどね」


先生の余計とも思える一言。
圭くんから無言の圧力がかけられたのか、先生はシュンと肩を落とした。


「そもそもの原因は、圭、お前だぞ。お前が、あっちへフラフラ、こっちへフラフラなんてやってるからだ」

「好きでそうしていたわけじゃない」

「ったく、これじゃ、俺はただのピエロじゃないか。いい歳して、7つも年下の女に……」


ブツブツと念仏のように、私たちに対する不満を口にする先生。
言い過ぎて喉が渇いたのか、目の前のコーヒーを口に持って行ったはいいけれど、あまりの熱さに「熱っ!」と噴き出した。


「ちょっと先生、大丈夫!?」


先生は恨めしそうに私をチラ見すると、差し出したおしぼりを手に取った。