「俺、呆れられるようなことしたか?」


全然自覚がないらしい。
呑気に鼻歌まで飛び出した。

この調子外れの鼻歌をまた聞くことになるとは、思ってもいなかった。


「それでどこへ行くっていうんですか」

「どこにする?」

「……決まってないんですか」

「一応、沙羅ちゃんの意見も聞いてからと思ったまでだ」

「私に意見なんて、ありませんから」


冷たく言い放つと、さすがに堪えたらしい。
先生は、ほんの少しシュンと肩を落とした。


そして、いつの間に眠っていたのか。
車が停車した感覚に目を開けると、窓一面に広がっていたのは青い空だった。