「いえっ、お店もあるし、たいした荷物もないですから大丈夫です」
茜に手伝ってもらえば、それで十分だ。
マスターと亜紀さんの手をあまり煩わせたくはなかった。
「そういえば、伊沢圭って知っていますか?」
「イザワ……ケイ……?」
目線を斜め上にして、亜紀さんが記憶を辿る。
「あー! うん、知ってるわよ、伊沢くんなら。昔はよく、健二くんとここへ来たもの」
やっぱりそうだったんだ。
だから、陽だまりに私がいると茜から聞いて、場所も聞かずにここへ来られたんだ。
「伊沢くんがどうしたの? 沙羅ちゃんの知り合い?」
「あ、いえ……。先生の話でちょっと出てきたので」
わざわざ亜紀さんに話すことでもない。
あやふやに誤魔化した。



