こっちを向いてよ、ダーリン!


乗っていた人の顔を見て、思わずギクリとした。
それが、あの真奈美さんだったから。

私に気づいた彼女も、音もなく車椅子を停止させた。

会わないまま帰れると思ったばかりだったのに。
どうして、こんなところにいるの……。

でも、会ったところで、私たちの間に話すことは何一つない。
軽く会釈だけして、車椅子を大きく避けるようにして自動ドアへ向けて足を出すと


「ちょっと待って」


すれ違いざまに声が掛けられた。

彼女の方は見ずに足だけ止める。


「沙羅さん、よね?」

「……はい」

「彼から聞いたわ。あの家を出たそうね」