「普通は教えないでしょ」
「ツッコミどころはそこなの?」
「え? 何が?」
「先生が沙羅のことをそこまで心配することの方が引っ掛からないの?」
「……え? 別に……」
「沙羅って、意外と鈍いんだね」
何のことを言っているのか、本当に分からなかった。
正直なところ、そんな思考能力さえ残っていない。
こんな夜に、そこまで気が回らないのが本音だった。
「ま、いいんだけどね」
自己解決したのか、茜は一人納得したように小刻みに頷いた。
「それで、圭くんとちゃんと話せたの?」
「うん……」
――でも、言い忘れちゃった。