間接ライトを一つだけ点け、音のない部屋で、ソファを背もたれにして床に座り込んでいた。


仕事帰りにそのまま病院に行っているに違いない圭くんは、未だ帰らない。

こうして一人、圭くんの帰りを待つのは、これが最後。
そう思うと、どうしてもしんみりしてしまって、涙が零れそうになる。


何か別のことでも考えよう。
そう思っても、圭くんのこと以外、何もないのが正直なところだった。

そして、圭くんが帰って来た気配がしたのは、もうすぐ22時を迎えようとしていたときのことだった。


リビングに足音が近づくにつれ、私の鼓動も早くなる。

心なしか早足になる音。
ドアが開けられて、圭くんは「沙羅」と一言ポツリと呟いた。