「もうフったの!?」

「ちょっと! 声が大きいってば!」


教室に響き渡るほどの大声を張り上げる茜の口元に、慌てて人差し指を当てた。
一斉に私たちに注がれる視線が痛い。

幸い、講義開始の時間は過ぎているものの、肝心の教授がまだ姿を現していないおかげで、周りの視線はすぐに私たちから外れたけれど。


「いい加減呆れるわ」


外国人がよくするオーバーリアクションのように、両手を天井へと向けて、茜が器用に眉を吊り上げる。

惚れ惚れする美しい横顔がほんの少しだけ歪んだと思ったら、これまたムカつくくらい長い足を組み替えた。


「だって、子供っぽいんだもん」