「……そう」

音遠くんは私の手を握り直した。

「なんか、モヤモヤした」

え?


「蝶羽ちゃん、僕から離れるの、禁止」


えええ?!

引っ張るように連れていかれて、音遠くんの表情は見えなかったけど……

(もしかして……嫉妬?)

まさかね。

カップルのふりしてたら、本当にカップルになったような気分になったのかな、私。

そもそも付き合ってないんだから、嫉妬も何も無い。

私は音遠くんに引っばられるまま、その場を後にした。







「音遠くん、音遠くん?」

いきなりどうしたの?

「なんか颯馬さん、怪しいんだよ。さっきから誰かとスマホで話してるし、お客さんの事ジロジロ見たりしてるし」

「え?」

相変わらず阿弓にちょっかいを出す颯馬さんをよく見ると、確かに誰かと連絡を取ってるような素振りを見せてる。

顔が真剣だから、ほかの兄弟や奥さん相手では無いと思う。

「でも、颯馬さんて小学校の教師でしょ?」

「そうなんだけどね、僕的にはちょっと気になる……」

うーん、と天井を見やる音遠くん。

「あ、そうそう、蝶羽ちゃん、予告状はさっきスタッフルームにこっそり置いといたから」

「あ、あぁ。それはありがとう」





……―――この時点で。










もう既に殆どの布石は揃っていたんだ。