スワロウテイル

「どうかしたの?」

「ううん。なんでもない」


私は、何にも言えなかった自分を誤魔化すようにして話し始めた。


学校で勉強したこと、自分が知っている世界のことを、地図を見ながら語って、それを聞くリコリスの反応を楽しんだ。


氷だらけの北極、南極のペンギン、アフリカ大陸の広大な自然と砂漠、南米のアマゾン。それから母の生まれた国。


「ねぇ、あなたの髪の色、もしかしてお母さんからもらったの?」


リコリスは母の国の話をしている途中でそう言った。


「そうよ。だけどね、私、自分が嫌いなの。大嫌い。こんな色の髪の毛してるから、友達、あなたしかいない。」

「そう?」

「だって、この国の人、誰もこんな髪の毛の色してないもの。」

「でも、みんな違うのが普通じゃない?」


リコリスがそう言ったとき、私はハッとしたが、それでも、私を仲間はずれにする人達を思い出して悲しくなった。


「も、もちろんそう。だけど、誰もそんな当たり前のこと、わかってないから。」


でも、それは自分にも言えることだった。