それを受けて、春子は顔を真っ赤にしながら、頬を膨らませてキッと、ヴァンパイア礼士をにらみつけた。

「あはは、そう怒るなって。

たかが、人前で上半身裸にされて、俺様に左耳はむはむされたり、お腹や太もも、鎖骨をなでなでされただけだろーが。

ブラだって、付けたままだったし。」

「バカ!大きな声でなに言ってるのよ!

周りに…

!?」

(人前で、だってよアイツら。

どういう趣味だろ?)

(ブラ…ですって!

全く、最近の若い子と来たら…ヒソヒソ。)

「もうヤダ!帰る!」

「お、おい待てよ!

外暗いから、送ってや…」

「結構よ!送りオオカミ…いいえ、送りヴァンパイアの手にかかったとあれば、松永家末代までの恥ですから!

良いお年を!」

そう言って、春子は立ち上がり、自分の分のお会計だけ済ませると、後ろを振り返る事無く、乱暴に店の扉を開いて出て行ってしまった。

一人残されたヴァンパイア礼士は、ポカーンとしたまま、その様子を眺めていた。

「…す、少しからかい過ぎたか。

へへっ、でも『良いお年を』だってよアイツ!

…礼士先輩、礼士先輩って言ってる割には、案外俺様に気があるんじゃねえの?

あははっ!」




「…もう!なに言ってるのかしら、私。

何が良いお年を、よ。

また合おうね、って言ってるみたい。