「はあっ、はあっ、も、もう良いでしょう?

もう…駄目…」

「随分と、お困りのようですがお嬢様。

しかし、この俺様の両手も、行き場を決めきれずに立ち往生しているんだ。

…乙女座、お前の口で言うんだ。

上と下、どっちに行って欲しいかを。」

ヴァンパイア礼士の右手が、春子のお腹から太ももへ、左手がお腹からみぞおち、胸の谷間を通って鎖骨をくすぐるように軽快に踊る。

「ん…んんっ…」

「だんだん、可愛い表情になってきたぞ。

さあ、次は邪魔なスカートを取り上げて…

…あら?」

「く、くそっ!暗闇で見失ったか?」

(もっと~っ、もっとして~っ!)

「くっ…




…確かに、確かにここを曲がったんだ!

なのに、なのに一人も髪の長いメガネの女がいない!

くっそ~っ!」

遠山恵美子は、とても悔しそうな顔をすると、その広場から走り去っていった。

「…お前はハートのAを、あの女は人の愛を。

だが、やっぱりマジックの王道といえば、人体消失トリックだとは思わないか?

乙女座!」

「こ…この…」

「ん?」

「ド助平ヴァンパイアめぇ~っ!」

「ぐわっ!」