今春子は、ヴァンパイア礼士の太ももの上に座らされている。

その『特等席』からは、180度見渡す限り、色んな愛の形が一度に見る事が出来た。

嫌でも視界に入ってくる、目まぐるしく移り変わっていく、その愛の形。

春子の頭からは、沸き立てのやかんの様に、ぼぉ~っ!と、湯気がわき出ていた。

「…お互いに見られ合いながら、ってのも、中々のもんだろ?

さあて、みんなに負ける訳にはいかないよな、乙女座。

特別な聖夜に、しようぜ…」




「な、な、何なんだ、これは!?」

春子を追って十字路を曲がった、遠山恵美子。

そして、そこで目にした愛の営み達に、唖然として立ち尽くしていた。

-ははっ、見て見ろよ乙女座!

あの女、突然自分の視界に入ってきた驚きの光景に、固まってやがる。

まさか、さっきまで自分が追ってた女が今、大胆にも自分の目の前でこんな事してるとは思い至るまい。

もっと、見せつけてやろうぜ!-

そう言うと、ヴァンパイア礼士は、春子の上着を脱がした。

「やっ、止めなさい!

そ、そこまでやる必要なんてないでしょう!?

あっ…」

妖しく、優しくヴァンパイア礼士の両手が、春子のお腹の当たりでダンスを始める。

春子は、小刻みに震えながら、必死にヴァンパイア礼士の両手をどかそうとするが、そうすると、はむはむされている左耳を守る事が出来なくなる。

耳を守れば、今度はお腹が…