それを受けて春子は、ムッとした表情を見せながら言った。

「ほ、本当に失礼ね~!

そ、そんなに疑うなら、ア、アンタで良いわよ!

さあ、心ゆくまで選びなさいよっ!」

怒った表情を見せながら、カードを突き出す春子。

そして中川猛は、ハートのAを選んだ。

「…ハートのAですね?分かりました。

では、このカードを消す為に、私の助手である安宮礼士が手に持つ、くじ引きの箱と同じ作りの、正六面体の、頂点にまるい穴の空いた、この小型の黒色のボックスを使います…」

そう言って、春子が礼士からそのボックスを受け取ろうとした所で、また中川猛の横やりが入った。

「…っととと!あの~突然ですが、その方の助手は、私にやらせてもらいませんでしょうか?

インチキはしないとは思いますが、アナタの身内ですから、安宮先輩は…」

「どっ、どこまで疑り深いのかしら、コイツ!

…好きにしたらっ!」

苛立たしい表情を浮かべながら、春子は礼士からひったくるようにしてそのボックスと、自分の手に握られたトランプのカードも中川猛に渡してしまった。