十二月二十一日。終業式が終わった、春子のクラスである一年一組の教室では、ほぼクラス全員が、春子のカード消失マジックを見る為に残っていた。

机を教室の端に寄せ、真ん中にマジックを披露する為のまるテーブルを置き、約二十人程の生徒に囲まれた状況。

今まで経験した事の無いぐらいの監視のもとでのトランプ消失マジックに、春子の助手を務めることになった礼士は、おどおどしながら小声で春子に言った。

「ハ、ハルちゃん!大丈夫なの?

結局、君が僕に頼んだ事は、隙を見て、僕が君が観客から指定されたカードを握りこんでしまう、っていった内容でしょ?

…本当に、大丈夫なの?顔だって、普段と違って真っ赤だよ?」

心配そうに、春子を見つめる礼士。

しかし、実はこの時春子が顔を真っ赤にしていた理由は、他にあった。

-な、何よ~っ!

い、いくら服の中にカードを隠し持つのを防ぐ為とはいえ、こ、こんな格好…

た、確かに観客に女子もいるけれど、ほとんどが男子!

…って言うか、男子なんて、全員参加してるじゃない!

アンタら、本当はマジック見に来てるんじゃないんでしょーが!-

と、言うのも、中川猛の依頼によって、演劇部から借りてきた魔法使いの衣装。

今、春子が着ている訳だが、言ってしまえば、下着の上から、気持ちぶかぶかのシャツを着ているだけで、太ももも大部分が露わになっていて、下手したら、はいているパンツが見えてしまいそうな代物だった。