彼と出逢ったのは、大学一年の春。


彼は入学と同時に、その顔の良さで人気者だった。

彼が悪いわけじゃない、でも彼の周りには女の子がいっぱいいて、囲まれている彼はすごく輝いてた。

みんなからチヤホヤされている彼が苦手だった。

あの“俺はなんでも出来る”、そう言ってるような、そんな彼が苦手だった。


でも、そんな彼を苦手だと思いながらも、不覚にも彼を目で追ってしまう、そのことに気がついたんだ。



その時は付き合ってる人がいたけど、私の心には彼しかいなかった。



彼の隣を歩いてみたい


あの子のように彼の腕に自分の腕を絡めて歩いてみたい



でも、現実はそう上手くいかなくて。


それに“お前なんか興味ない”、そう言われてしまいそうな気がして、

本当に彼からそんなこと言われたら二度と立ち直れそうになくて、


だから、彼を見ないことに決めた。

彼の声を聞かないことに決めた。

そうすれば、こんな想いなんてすぐにどこかに消える。


そう、思ってた。



でも、当時の彼と向き合う気持ちになれなくて、私から別れを告げた。




忘れよう、忘れよう。


そう思えば思うほど。


とめよう、とめよう。

そ言い聞かせれば言い聞かせるほど。



私は彼を好きになっていく。



どうせ“好き”だと言っても、きっと周りの女の子たちと同じ扱いをされて終わるだけ。


もしかしたらそれ以下で、“お前なんか興味ない”、そう言われて終わるだけ。




でも、この想いだけは止められなかった。



そんな時に彼はゲームとは言えども、私にキスをした。


あの時のキスで、私の想いは更に加速していくのを感じた。



だから、悲しかった。


あの子と同じ扱い、彼にはなんでもないキスで。


本当に彼に、私という人間が映ることのない、その事実が悲しかった。