気付かなくていい。
知らなくたって良いことは、この世に沢山ある。
……だって、初恋の相手が最低だったなんて、どう考えたって知らなくて良かった。
純粋に好きになっただけなのに、こんな理由で苦しむ必要なんて、ないじゃない。
「それに、あのこには陽一くんがいるから」
美沙ちゃんを幸せに出来るのは、彼しかいないって本気で思ってる。
真っ直ぐで一生懸命で、彼はどことなく美沙ちゃんと似てる。
「佐和ちゃんはさ、それで良いの?」
いつになく真剣な顔をしてそんなことを聞くんだから、おかしくて笑ってしまった。
良いとか、悪いとか、そういう問題じゃないじゃん。
第一、優也なんかに心配されたくない。
「あの人の瞳には美沙ちゃんしか映ってないのに、どう足掻けって言うのよ」
好きじゃないなんて、嘘。
好きよ、中学の頃から、ずっと。
……陽一くんは、私の初恋だもん。


