[短編]初恋を終わらせる日。




パシン、と乾いた音が静かな空間に響いた。

お姉ちゃんは目を丸くしながら、信じられないという風に私を見つめてる。


私だって、信じられない。


こんなことお姉ちゃんに、いや、人に初めてした。

どうしても、耐えられなかった。





「……いい加減にして」




口から出た声は、自分でも驚くほど低くて、怒りに震えていた。

自分だって天谷に甘えて利用してたくせに、とことん自分勝手だと思う。


それでもこれ以上、苦しめたくなかった。

天谷から、笑顔を奪いたくなかった。




「……私ね、美沙ちゃんのそういうところ、昔から大嫌い」


「……っ、」





そのあまりに真っ直ぐな言葉に唇を噛んだ。

私だって、お姉ちゃんのことは好きじゃない。


何でも出来て、優也くんにまで好かれるお姉ちゃんが羨ましくて、憎くてたまらなかった。


……それなのに、何で、こんなに悲しいんだろう。