「あっぶねー…心臓止まっかと思った」

「……」

「優衣、大丈夫か?」


とっさに手を伸ばしたのか、地面には跳ねて転がった様子のビニール傘。


間一髪、私は隼人に支えられていた。



「…だ、大丈夫!びっくりさせてごめん…」

「……」


このとき、偶然にも手が私の腰辺りに触れてか

突然パッと隼人が私から手を離す。


「…あんま心配、させんなよ」

「……」

「じゃあな」


あ…


どこかそっけない口調でそう告げて、落とした傘を拾い上げる隼人。

そのまま顔も見ずに走って行ってしまった。


いっそう強くなる雨の中、仕方なく私は家のドアに手をかける。


「……っ」


でももう一度だけ…


わずかな希望を抱えるようにして後ろを振り返る。


でもその先に見える隼人は雨の中を駆け出したまま、一度もこっちを振り向かなかった。