「「好きな人ができたぁ?!」」


4月。穏やかな風の吹く午後の昼下がり。

校内中響き渡りそうな声に、私は「シーっ」と指を立てる。


「二人とも、声が大きい…!」

「ごっ、ごめんごめん。…で、誰なの?その好きな人って」


気を取り直した様子のユカリが、今度は声を潜めて聞いてくる。


私はとっさに辺りを見回したあと、コソ…と耳打ちする。



「…実はその、サッカー部にいる、広瀬先輩…なんだけど」



やっとの思いでそう打ち明けたのもつかの間

互いを見合せた二人の顔はみるみるうちに険しくなり…



「えーーー!?広瀬先輩!?」

「優衣ってば正気? 気は?気は確かなの?」


ユカリはともかく
いつもは冷静なみーちゃんまで私の肩をガクガクと揺らしてくる。



…もう!

さっきから何なの?


こっちは真剣に話してるのに!