私はどうすることも出来ずに、無表情で殴り続ける茜を見つめた。
ぼーっと、ぼーっと見つめて。
ぼーっとしてる頭にふと浮かんだのは
──────“誰”
だった。
それによって、私はパッと我に返る。
…何を考えてるんだ、私。
茜だよ。誰って、茜でしょ。
茜以外にいないじゃん。
………知ってる、わかってるけど。
私の知ってる茜じゃない、気がして。
目の前で気絶してる男を殴り続ける茜が怖くなる。
早く、早く、早く元の茜に戻さなきゃ。
変な焦りがうまれて、私の頭には警報が鳴り響いた。
───茜が、壊れちゃう。
何を根拠にそんなことを思ったのかはわからない。
でもなぜかそんな風に感じて、私はベンチから素早く立ち上がって茜の腕を抑えた。
「茜っ!!もう気絶してるよ!!」
「……」
必死になって叫ぶけど、茜は聞こえない見たいにまだその男を殴り続ける。
やだ、やだよ、茜。
壊れないで、いなくならないで、変わらないで。
────茜、何があったの?
「茜っ、茜ぇ!!!もう平気だから、やめてっ」
「……」



