───そんな動作を繰り返して、気づけばこの場所に来てから10分が経過していた。





だいちゃんのフルネームは、橋本 大樹(はしもと だいき)。


この家のプレートにも、『HASHIMOTO』の文字。



──この家で間違いないことなんて、10分前から分かっていて。



ただ、それでも、どうしても。


足が、手が、勇気が出ない。


ああもう、意気地なし。


…って、これじゃあ不審者だと思って通報されちゃうよ!


どうしよう、なんてうろうろと動かしていた足を止めた。



目を閉じて、ゆっくり、インターホンのボタンに触れる。


けれどほんの少し震えた指先は、触れただけでそれ以上奥には行ってくれなかった。



「…はぁあぁ〜…」



大きく、大きく、ため息をついて。


もう一度背筋をしゃんと伸ばす。



よし、いけるぞ日向!!!

大丈夫!!



これで私、前に進めるんだから。



覚悟を決めて、震える指を出す。

インターホンに触れるまで推定1センチ。


そして私は声を出し、勢いをつけて。