ポケットに手を突っ込んで、お母さんからもらった紙切れをカサリと触る。
────あとは、これだけ。
過去で止まってた私の列車は少しずつ動いて。
もう、“今”の一駅前まで来ている。
ただ、あと一駅。
“今”から、“未来”へ、進んでいくための一駅。
ポケットに入った紙を、大事に、優しく握る。
──これが、最後の切符。
これで私は、進んでいける。ちゃんと。
「…あと一歩だ」
息を吐いて、笑って1人で呟いた。
ねぇ、茜との、お母さんとの、白龍との、みんなとの未来を見てみたいから。
過去で止まってらんないから。
─────終わりにするね。終わりにしよう。
振り返って、茜と目を合わせて笑えば。
若干引きながら、
「え、お前の家まであと一歩じゃ着かねぇけど」
…と言われた。
「ぶち壊しだよ茜!!」
「なにがだよ」
「うん、全部!!!」
──ねぇ、柵も過去の過ちも、全部全部、終わりにするよ。
この先この日を忘れることはないだろうな、茜と出会った日みたいに、白龍のみんなと出会った日みたいに。
そんなことを考えながら、私は笑って一歩一歩、踏み出す。
────過去から、今へ、一歩一歩。