ありがとう、茜。


ここにいてくれて、待っててくれて。


抱きしめてくれて。


私の背中を押してくれて。




茜が小さく呟く。



「よかったな」



って、一言。




ああ、もう、ありがとう以上の言葉が見つからなくて、もどかしくなる。



だから一言、いろんな気持ちを込めて「うん」と呟けば。



ぎこちなく、茜が私の腰に回した手に力を込めた。





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病院からの帰り道。夜の中、茜と歩く。



寒いわけじゃないけど。



すぅ、と息を吸えばいつもより冷たく深く息が入ってくる気がする。


肺が、胸が、軽く感じて。



何回も深呼吸を繰り返せば、茜が笑う声が聞こえた。



「なにやってんだよ、お前。ガキか」


「う、うるさいなぁ」



そうは言っても、私の顔から不思議なくらい笑顔が消えなくて。


そんな私をみて茜がまた、笑った。