向かいの家の、おじさんが…。



もう顔もはっきりと思い出せないけど。


海で、意識を失う前。



聞こえた声はおじさんのだったのかな。



ねぇお母さん、まだおじさん生きてるといいな。





お母さんが退院したら、一緒にもう一度あの街に行きたい。



怖いけど。お母さんにとっても嫌な場所だろうけど。





「お母さんのせいだけじゃ、ないよ。みんなみんな、私がだいちゃんを殺したんだと思ってた。それにやっぱりそうなっちゃった原因は、私だから」



「ねぇ日向、まだ過去に苦しめられてる…?私のこと怖くないの…?」




心配そうにお母さんが顔を歪める。


それに私は、あわてて首を横に振った。




「違う。心配しないで?お母さん、私もう、前に進めてるよ。……大切な人がいる。大切な人達がいるんだ。お母さんに言うの、怖いけど。これでお母さんが私のこと嫌いになっちゃっても仕方ないんだけどさ、」