真実と嘘〜Truth or Falsity…*〜【下】



「やっべー!!!海みえたー!!!」




「っ、」



前の方で叫んだ誰かの声が、私の耳まで届いてきて。




私は無意識のうちに眉と口に力を込めた。




茜がなんでちょっかいをだしてきたのかは知らないけど、『イライラをぶつけたいなら』この台詞は、私には言えなかったな、なんて思う。


だって、茜のムカつく発言に対する私の強めの返事は、茜に対してのイライラじゃないものまで入っていた。


焦って、大丈夫って言い聞かせてはみるけど、心に余裕がない、イライラ。



それを茜に少しぶつけてしまった。自分で言っておきながら。



ごめん、謝ろうとしていつの間にか俯いてた顔を上げたら、不意打ちで、眉間をトンと押された。



突然のことに、「わっ」なんて声を漏らして、強張っていた顔の力が抜ける。



「イライラしてんのはお互い様だな。お前に何があんのかは知んねぇけど、そんな、思いつめた顔してんなよ。……いつにもましてブサイクに見える」




そう言って、前を歩いて言ってしまった茜に、私の心臓はキュッと締め付けられた。



──そうだった、何考えてんだ私は。茜はイライラしてるからって、無条件にちょっかいだしてきたりはしないじゃん。



ぜんぶ、私の強張った顔をなおす為にやってくれてた。



茜は、なんでか知らないけどあんなに不機嫌なのに。



それでも周りが見えてるんだ。




…すごいなぁ。