もっと、おばさんのこといろいろ聞きたかったのに。
病室で1人。遠くに見える海を視界に入れないように、はぁ、とため息を吐き出す。
まるで、頭の片隅にある、私がここに運ばれてきた理由───“海での記憶”に蓋をするように。
────そして、三日が経った。
これでこの街ともサヨナラできる。
寂しくない、わけじゃないけど。
それよりもやっぱり、安心の方が大きくて。
────私はバカで、ずるかった。
『きたわよ、荷物はまとめてある?』
『あ、はい。そんなにないので』
『家には。大切なものとかない?』
表情を変えず、淡々と聞いてくるおばさんに返事を返しながらおばさんの車に乗り込む。



