どこかで嗅いだことのある香りがふわり、鼻をかすめる。
それだけで、私の頭の中をループしていた過去の記憶は、停止ボタンを押したみたいにピタリと止まった。
それでも、止まらない涙はまた、私の視界を歪ませては落ちていく。
目に涙をためたまま、震える唇をギュッと噛んで、私は後ろを振り返った。
なんでいるの、そう聞いても、意地悪く口角を片方上げて。
あぁもう、なんだかなぁ。
壊れそうになって。
後ろを振り返っても。
──前までは誰もいなかったはずなのに。
瞳に映った金髪が、じわりと滲む。
ねぇ、やっぱりあんたは、私のヒーローだ。
どれだけ世間が蔑んでも。
どれだけ世間の悪者でも。
────ねぇ、茜はヒーローだよ。



