その後いっかい、深呼吸する。
──大丈夫。平気。見るまでが怖いだけだもん、見ちゃったら平気だもん。
自分に暗示をかけるように心の中でそう呟き、周りを見渡すと、龍騎さんの荷物を乗せた車が到着した。
キュッと、軽やかなハンドルさばきで黒の車を止めて、車から降りてきた龍騎さん。
いい、イケメン度が増してみえるっ…!
なんて思いながら、私もそこまで駆けて行った。
荷物を降ろすのを手伝っている朝陽さんに「私も手伝いますっ」と言ったら、「ああ、サンキューな」と爽やかな笑顔で微笑まれた。
うん、素敵。
そんなこんなで荷物を降ろしてみんなに渡して、11時くらい。
茜を先頭に、私たちは建物の中に入った。
綺麗なとこだなぁ…。
入ってすぐに、洋風な、でもセンスのいい皆でくつろげるスペースがあって、その奥にホテルのように部屋の扉が並んでいた。
受付とかしなくていいのかな、とか思ったけどみんな当たり前というように歩いていくので、私もそれについていく。
三階まであるらしく、階段の前で茜に部屋の割り振りを聞かされた。
「女子2人は同じ部屋。302号室。…これ鍵な」
相変わらずそっけない茜を不服に思いながらも、伽耶と一緒に部屋に着いた時にはそんなの吹き飛んでいた。
「うっ、わあぁぁ…」
思わず漏れた歓喜の声に、伽耶も納得したのか「すごいね…」と言った。
泊まりに来たのなんて久しぶりだから、普通の部屋がどれくらいなのかは知らないけど、2人でこれはすごいと思う。
ベッドが二つ余裕に入って、テーブルと机もあって、広い洗面所があるにもかかわらず他の場所にドレッサーも置いてあった。
それも、部屋の中が白と青で統一されていて、すごくオシャレ。
部屋のいろんなところを触って周りたいのはやまやまだけど、生憎いまからすぐ海に行くんだ。
お昼を食べるためにも。



