やっぱり、茜は素直じゃない。
本当は泣きそうなくらい嬉しいくせに。
もう、ちょっと泣いてるくせに。
でもそんな素直じゃないのが茜らしくて。
わかりにくいけど、でも嬉しいんだろうなって伝わってきて。
…うるっと来てしまったのは内緒だ。
「死ぬかよ。いい加減、仕事戻れ。大変なんだろ」
そんな素直じゃない茜の言葉に、茜のお父さんは分かってると言うように笑って頷き。
「茜のこと、よろしく頼むな。じゃあ」
私の方を一回見てから背を向けて歩き出した。
少しの間の後。
多分、茜が泣きそうになったことに私が気づいてるって、分かってるんだろう。
地面に向けていた顔を上げて、私になるべく顔を見せないように茜はバイクに跨った。
「──俺らも、行くか」
弱いところは見せたくないのか、私に顔を見られないようにとった不自然な動きが、可笑しくて可愛くて。
「あははっ」
私は茜のバイクの後ろにのって、笑ってしまった。
「いっ、いいからさっさと腰に手ェ回せ!!」
私にバレるのがよっぽど恥ずかしかったみたいで、赤面しながらキレたツンデレ茜が可愛くて、私は茜の腰に手を回しながらまた吹き出した。
腕に感じる、ミッキーよりもガッチリした久しぶりの茜の感覚。
久しぶりのそれに胸がきゅんてなって、無意識に茜の腰に回していた腕に力を込める。
「やっぱり、茜の後ろが一番安心するっ」
えへっ、なんて笑いながら呟くと茜の動きがピタッと停止した。



