「──じゃ、いくぞ」
──ブォンブォンブォン…
その声を、合図にするように、辺り一面にけたたましい音が鳴り響いた。
心臓を揺さぶるその音に、一瞬びくりとした私。
だけど、すぐにその音が好きになっていた。
その音以外の音を聞こえなくするような、遮断するような大きい音。
“海に行く”そのことに、本当はまだ少し怖がっていた心の中。
でもそんな心の中の恐怖を全てかき消すように、過去のことをかき消すように、耳を劈くその音は私を少し安心させた。
近所の皆さんごめんなさい。
なんて暴走族らしからぬ甘いことを心の中でひっそり思いながら、
「つかまってて」
私の方を振り向いて、ふわりと微笑んだミッキーに頷いてミッキーの腰に手を回した。
一回大きくふかす音がなって、動き出したタイヤに私は“ミッキーだから”と油断していたのかもしれない。
いや、ものすごくしていた。



