反撃を受けまいと私の横を早足に通り過ぎて、前でニヤッと笑った茜。
横を通り過ぎる時に耳元でポツリ、呟かれた言葉に。
私はびっくりして、「ふざけんな」と言い終わる前に口を閉じ、足を止めて、目を見開いて茜を見た。
ジッと見つめる私に茜は、照れたのか顔をサッと前に向けて歩いて行ってしまう。
びっくりして停止していた私は数秒経ってから、フッて顔を綻ばせた。
────ねぇ茜。自分で気づいてる?
茜、今までよりずっと、今までで一番、すっきりした顔してるんだよ。
やっぱり、私と茜のお父さんが話していたのを茜は聞いてた。
私ちゃんと茜の役に立てたかな?
お節介って思われなかったんだよね?
こんなんじゃ返しきれないくらい、茜にはいっぱい救ってもらってきたけど。
─────ほんの少し、ほんのちょびっとなら返せたって、思ってもいいよね?
前を歩く茜の広い背中を見て、何でか分からないけど───いや、きっともう分かってる───キュッと締め付けられた胸を無視して、私はその背中めがけて駆け出した。
頭の中で、さっき耳元で呟かれた、
『────サンキュ』
その言葉をリピートさせながら。



