「……じゃあ、あたしはこれで」



突き刺さるような視線に耐えられなくなり、軽く頭を下げて踵を返した。








「───オイ」



数歩歩みを進めた時、背後から声を掛けられてゆっくりと振り返る。


交えたのは、さっきと変わらない真っ直ぐな瞳。



「俺達はいい。けど、陽とは友達でいてやってくれ」


「……十夜?」



そんな事を言われるとは思っていなかったのか、陽が大きく目を見開かせる。



「………」



……そういう事、ね。



真っ直ぐ見据えるその瞳にあたしは納得した。


この人は見た目と違って情の厚い人なんだろう。


あたしと陽が親しいのを知り、陽の事を想ってそう言ったんだ。



「ふふっ」



思わず零れる笑み。


それを見た失礼男は馬鹿にされたのとでも思ったのか、眉を潜めた。



「あ、ごめんね。馬鹿にしたとかじゃないから。ただ、優しいなぁと思っただけ。

心配しないで。あたし、陽と友達やめる気ないから。じゃ、陽きゅんまた明日!」


「へ?あぁ、うん、また明日!……って、陽きゅんって言うなって言ってんだろ!」


「あはははは!バイバーイ!」



憤慨する陽に笑顔でバイバイと手を振った後、あたしは振り返る事なく屋上を後にした。