いくら喧嘩が出来ると言っても、勝てるかどうかは状況によると思う。


あたしは女。そして、一人。


勝てる確証なんてどこにもない。


けど、この人達と接触しなければ中田に狙われないかもしれないし。


その可能性が少しでもあるのなら、あたしはその可能性に賭けたいと思う。




「──そういう訳だからお願いします」



爆笑男の問い掛けには応えず、丁寧に頭を下げる。


不本意だけど仕方ない。


これ以上巻き込まれるのは御免だからね。






「一つ、条件がある」


「条件?」



失礼男の言葉にきゅっと眉が引き寄る。



「中田が何も仕掛けて来ないと分かるまでお前に見張りをつけさせて貰う」


「……見張り?」



更に深くなる眉間の皺。


当たり前だ。


誰だって“見張り”をつけると言われたら良い気はしないだろう。



「見張りと言ってもお前と関わる訳じゃない。それはちゃんと言っておく」


「………」


「お前の安全が分かった時点でやめる」



淡々と言い放たれるその言葉は決していい加減なものではなかった。


瞳が、真っ直ぐなその瞳が言ってるから。


“本心”だって。


あたしに危害が加わらないようにするからって。


そう言ってるように見えた。





「……分かりました。じゃあそれまでお願いします」



そんな風に言われたら断れる訳がないじゃない。


あたしの為に言ってくれてるんだし。


巻き込まれた喧嘩がこの人達の喧嘩で良かったって、そう思って諦めるしかない。