「なんであたしが消えなきゃいけないんですか?」
「いいからさっさと立て」
「………」
だから、なんであたしがこの人に命令されなきゃなんない訳?
「早く」
「………」
「オイ」
「………」
「早く立て」
男からの命令にあたしの中で何かがプツンと切れた。
「……あのさ、何であんたにそんな事言われなきゃなんない訳?
消えろって言うけどね、あたしの方が先にブランコ乗ってたの!
どうせあんたもブランコに乗りたいだけでしょ!?そんなに乗りたきゃ隣のブランコに乗ったらいいじゃない!!」
キレてしまえば最後、感情なんて抑えられる訳がなく。あたしは、相手が男だという事も忘れて思いっきり感情をぶつけた。
「乗るの!?乗らないの!?言っとくけど此処は譲らないからね!乗るんなら隣に乗ってよ!」
左手にはブランコの鎖。
右手は隣のブランコを指差し、一気に捲し立てる。
男はあたしの猛反撃に驚いているのか、何か言いたげな目であたしを凝視していた。
その表情に少し満足。
けど、数秒もしない内に戻ってしまい、いや、それ以上に顔がゆがんでいき、最終的にはさっきよりも恐ろしい形相であたしを睨み返してきた。


