「名前、呼んでいいなんて言ってないけど」
「……お前、陽と俺の態度違いすぎねぇ?」
……無視ですか。
いちいちムカつくよね、この人。
「用件言って下さい」
「タメでいいっつってんだろ?」
「用件」
誰がアンタの言う事なんて聞くもんか。
……って。
「いっ……!いったーい!何すんの!?」
「煌!」
フンッと顔を逸らしたのと同時にむぎゅっと左頬を抓られて。
というか、引っ張られて。
頬が有り得ないぐらい引き伸ばされた。
ちょ、有り得ないんですけど……!!
「ターメ」
「分かった!分かったから離して!」
抓られたまま数回頷くと、爆笑男は「よしっ」と言って離してくれた。
こ、コイツ……。女の子になんて事すんのよ!!
「煌!女の子になんて事するんだよ」
「知ーらね」
「……ったく。凛音ちゃん?で良かったよね?頬っぺた大丈夫?痛くない?」
あたしの方へと向き直り、膝を折って心配そうに覗き込んでくれる王子様。
左頬に触れるその指先に、ボンッと顔が発火する。
「は、はい!大丈夫です!」
あわわわわわわ……!
王子様の手があたしの頬っぺたに!!
「なら良かった。ごめんね?手荒な真似して」
「い、いえ……」
申し訳なさそうにしながらも優しく微笑んでくれる王子様に頬がフニャリとだらしなく緩む。
……あぁ、なんでこんな優しい人が暴走族に入ったのだろうか。
ホント不思議で仕方ない。
絶対に爆笑男に騙されてるって。


