「な、なん……!」
驚きすぎて言葉にならない。
人を指差しちゃいけません、と教えられたけど、驚きすぎてそんな事頭からすっぽり抜け落ちてしまっていた。
それぐらい驚愕。
だってだってだって、
そこにいたのは──
「見ぃーつけた」
一週間前、あたしを喧嘩に巻き込んだあの爆笑男だったのだから。
……う、嘘でしょ……?
まさかこんな所で逢うなんて……。
もしかしたら道端でバッタリ逢うかもしれないかもって思ってたけど、まさか学校で逢うなんて思ってもいなかった。
「え?知り合い?」
目を丸くして驚いているのは、もうすっかり回復している陽。
未だ指を差したままのあたしと、愉快げな笑みを浮かべている爆笑男を不思議そうな顔で交互に見ている。
「ホラ、例の中田の股間蹴った面白い女だよ」
こか……!
「はぁ!?あれが凛音!?」
「……十夜、どうする?」
そう言った爆笑男は、チラリと右方へ視線を向けた。
それにつられて振り向くと……。
「……上行くぞ」
「……ぁ……ぅ…」
う、嘘でしょー!!
そこには、爆笑男の片割れとも呼べる男、あの失礼男がいた。
「……嘘だ……」
何度も瞬きをして、その存在を確かめる。
だけど、何度見てもやっぱりそこにいるのはあの失礼男で。
……アイツだ。
あの男だ。
あたしに“どっか行け”って言った超失礼男。
窓に背を預けて目を伏せているけど、身長、髪型、纏う雰囲気、どれを見てもあの失礼男に間違いなくて。
……最悪だ。
目の前にいる男があの失礼男だと認識した途端、脳内にゲームオーバーのメロディが流れ出した。


