『出来ても俺がいいって思う奴じゃねぇと駄目だからな』
毎日の様に電話をしてくる貴兄と優音に、早くもウンザリなあたし。
シスコンもここまで来るとちょっとウザイ……。
「何で貴兄の好みに合わせなきゃいけないの!?もういいよ!彼氏出来ても貴兄には絶対言わないから!それと、明日来なくてもいいからね!じゃあおやすみ!」
『ちょっ、り──!』
毎度毎度同じ事しか言わない貴兄に呆れつつも苛立ってきたあたしは、返事を聞かずに言いたい事だけ言って一方的に切ってやった。
ついさっきまで気分が良かったのに、貴兄からの電話でテンションは一気に急降下。自然と足取りも重くなっていく。
「はぁ……」
手に持っていた携帯電話をポケットに荒々しく突っ込んで、大げさに溜め息を吐き出す。
本当に良かった。断って。
あの人達の誘いを受けてたらどうなってたか。
他の暴走族と関わってるなんて知れたらそれこそ強制送還だ。
あたし嘘下手くそだからあの貴兄に隠し通せる訳がない。
昨日の事もいつバレるか……。
あぁ、考えただけでも恐ろしい。
他の暴走族に入って、しかもそれを隠し通すなんて心臓がいくつあっても足らないよ。
うん、断って良かった。
自分の正しい選択にホッと胸を撫で下ろして、グッとと拳に力を入れる。
もう関わる事はないだろうし、これにて一件落着。
さぁ、スーパー行って買い物しよう。
胸のつっかえが取れた今、あたしの頭の中は晩御飯の事で一杯だった。


