Ri.Night Ⅰ 【全完結】



『そんなに目立たねぇよ』



不満げにそう零す貴兄に、今度がこっちが呆れた様に小さく息を吐き出した。


貴兄と出歩けない“理由”。

それは……。



「獅鷹(シオウ)六代目総長の何処が目立たないのよ」



貴兄が暴走族の総長だから。


最強と謳われる《獅鷹六代目総長》


それがあたしの兄、東條 貴音の正体。



別に“暴走族”が嫌いな訳じゃない。

普通の、ごく普通の暴走族だったら何も問題ないんだけど、うちのお兄様は“普通”じゃない。


あの容姿は私達が思っている以上に目立ってるんだ。喧嘩もハンパなく強いから余計に。


良くも悪くも相手に覚えられやすいんだよね。



『まぁそう言うなよ。そっちでは分かんねぇだろ?何だったら変装して行くし。

それに俺、凛音に逢いてぇんだよ。一人暮らしとかさせんの心配だし』



「もう!貴兄それ言うの何回目!? あたし一人暮らしぐらい出来るってば!それより貴兄達の方が心配なんだけど!」



一気にそう捲し立てて、足元にあった石を思いっきり蹴り飛ばす。



『じゃあ帰って来いよ。優音も心配してるし。男二人でむさ苦しいんだよ』



せっかく自由になれたのに冗談じゃない。

貴兄と優音がいない今がチャンスなんだから。

絶対に帰らないし!