『そんなに目立たねぇよ』
不満げにそう零す貴兄に、今度がこっちが呆れた様に小さく息を吐き出した。
貴兄と出歩けない“理由”。
それは……。
「獅鷹(シオウ)六代目総長の何処が目立たないのよ」
貴兄が暴走族の総長だから。
最強と謳われる《獅鷹六代目総長》
それがあたしの兄、東條 貴音の正体。
別に“暴走族”が嫌いな訳じゃない。
普通の、ごく普通の暴走族だったら何も問題ないんだけど、うちのお兄様は“普通”じゃない。
あの容姿は私達が思っている以上に目立ってるんだ。喧嘩もハンパなく強いから余計に。
良くも悪くも相手に覚えられやすいんだよね。
『まぁそう言うなよ。そっちでは分かんねぇだろ?何だったら変装して行くし。
それに俺、凛音に逢いてぇんだよ。一人暮らしとかさせんの心配だし』
「もう!貴兄それ言うの何回目!? あたし一人暮らしぐらい出来るってば!それより貴兄達の方が心配なんだけど!」
一気にそう捲し立てて、足元にあった石を思いっきり蹴り飛ばす。
『じゃあ帰って来いよ。優音も心配してるし。男二人でむさ苦しいんだよ』
せっかく自由になれたのに冗談じゃない。
貴兄と優音がいない今がチャンスなんだから。
絶対に帰らないし!


