Ri.Night Ⅰ 【全完結】



『何で?手伝って欲しくないのかよ?』



あたしの返事に不満げな声を上げる貴兄。


いや、そりゃあね。
あの山積みの段ボールを見たら手伝って欲しいと思うよ?


思うけどね。



「貴兄、目立つからやだ! 来るんなら変装してきて!」



貴兄は目立つから嫌なのよ。

普通に目立つぐらいならいいんだけど、貴兄は普通じゃないし。


まぁ、人それぞれ好みはあるんだろうけど。


けど、好みとか関係なく、貴兄の容姿は一般的に見て整っていると思う。

贔屓目じゃなく本当に。




貴兄こと貴音(タカト)は東條家の長男で、有名私立校に通う高校三年生。


面倒見が良く、自分で言うのもアレだけどかなりのシスコン。

いや、シスコンプラスブラコンだ。


まぁ、あたしも大概ブラコンだから人の事は言えないんだけど。



そんなシスコンブラコンの貴兄は、身長百八十センチを超えるモデル体型で、

ゆるいウェーブの長めの髪から見える中性的な顔は、そこら辺の芸能人より遥かに格好良い。だから、必然的に目立つ。



でも、貴兄が“目立つ”理由はそれだけじゃなく。

それだけなら、あたしはここまで嫌がったりなんかしないし、むしろ毎日でも連れて歩きたいぐらいだ。


だけど、それが出来ない理由がある。