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「なぁ」
「何?」
もうすぐマンションに着こうかという時、ふと何かを思い出したのか、煌が会話を途中で止めてあたしを見た。
「いや、言うの忘れてたけどさ」
「うん」
だから何よ。
もったいぶってないで早く言ってよ。
「この前、十夜が夜出掛けた日あっただろ?」
「夜?」
いつの事?
「あー、と、ホラ、お前が水溜まりに落ちた日」
水溜りに落ちた日?
って、あ、あの時か。
思い出して、ポンッと手を叩く。
あの日は忘れたくても忘れられない。
だって、十夜と初めて一緒にベッドで寝た日だから。
「あの日、お前と寝る前に話してた事あっただろ?十夜が一人で何処かに出掛けてるって」
煌の言葉に、コクリ、無言で頷く。
「あれな、何処に行ってたのか分かった」
「……え、分かったの?」
それってもしかして、煌の言ってた十夜の“好きな人”の所?
「お前、この前、壱とドライブデートとか言って二人で帰っただろ?その時、お前十夜の事壱に言わなかったか?」
……十夜の事?
「うん、言った。『十夜に好きな人がいるって聞いた』『時々居なくなるって言ってたよ』って」
「そう、それ。あの後、壱から聞かれたんだよ。壱も十夜が時々居なくなる事知ってたらしくてな。気になって調べてみたんだとよ」
「……うん」
なんか嫌だ。聞きたくないかも。
だって、十夜の“好きな人”の事でしょ?
そんなの聞きたくないよ。


