「………」
「………」
あたしは今、物凄く居心地が悪い。
理由は簡単。この邪悪な空気のせいだ。
あの後、十夜の傍へ寄っていったあたしは、十夜に手を引かれて隣に座らされた。
その時繋いだ手はまだそのままで。
まぁ、それは嬉しいから良いんだけど。
問題は、何で機嫌が悪いか、だ。
それが分からないから沈黙な訳なんだけど。
うーん。
っていうか、足元に転がっている数学の教科書がさっきから気になってるんだよね。
多分、あたしの推理が正しければ彼方を襲ったのはこの教科書に間違いない。
そして、これを投げたのは隣にいる十夜だ。
だって、ぶつけられた彼方が十夜を恨みがましく睨んでいるから。
うむ。なかなか根性があるね、彼方くん。
今の十夜さん、ブラックオーラ全開なのに。
まぁ、あの教科書をぶつけられたら痛いよね。
無残に転がっている被害者……いや、被害物教科書くんを見て、ハハッと笑う。
後でちゃんと拾ってあげるからね。
──なんて呑気に心の中で呟いていた時だった。
室内に響いたのは、コンコンというノックの音。
「どうぞー」
壱さんがそう言うや否や、荒々しく玄関のドアが開いて。
そこから姿を見せたのは、息を切らした冬吾くんと千暁くんだった。
「どうした?」
聞いたのは壱さんではなく、あたしの手を強く握っている十夜。
二人の様子に何か感じ取ったのか、繋いでいた手に一瞬力が籠った気がした。
「総長、今、水皇の下の奴が数人襲われました。襲った奴は誰だか不明です」
冬吾くんのその言葉に息を呑んだ十夜達。
十夜は小さく舌打ちをした後、あたしの手を離してゆっくりと立ち上がった。


