十夜の方へ走っていくけど、そのまま素通りし、階段を駆け上がる。


「……っ、オイッ、凛音!」


呼び止められたけど、そんなの知らない。


上がった後もそのまま突っ走り、勢いよくリビングのドアを開ける。


「おわっ!何だよ凛音かよ。ビックリしたぁ」


「陽!」


ソファーで飛び跳ねた陽に走り寄っていって、ソファーの後ろに身を隠す。


「どうしたの、りっちゃん」


「彼方、此処座って!」


「へ?」


「早く!」


「……ハイ」


あたしの気迫に押され、大人しく陽の隣に腰を下ろす彼方。


と、その時。


「凛音」


リビングのドアが開いて、大魔王十夜が現れた。


「りりりりりっちゃん。十夜さんがお怒りですが何かしたんでしょうか!?」


「階段一人で上がっただけ!」


「あ、なるほど……」


納得、と手を叩く彼方と陽。


「り──」


「り~の~。テメェまた一人で階段上がりやがったな!!」


「ひぇぇぇぇぇぇ!!」


しまった。忘れてた!陽と彼方だけじゃなく、煌ママも居たんだった!!


十夜の存在なんてすっかり忘れて、追い掛けてくる煌から必死に逃げる。


もう階段なんて大っ嫌いだぁー!!




その日一日、煌と十夜にしごかれまくったのは言うまでもない。