「ちょっ、」
動いたかと思えば突然顔面を押されて、そのまま元いた位置に戻される。
「バーカ」
「……はぁ?」
そんな捨て台詞を吐いて車から降りていった十夜をポカンと見つめる事しか出来ない。
……なに、今の。
「凛音ちゃん?」
「あ、降ります降ります」
外から車内を覗き込んできた壱さんに慌ててそう言って、車から降りる。
「ムーカーツークー」
「ん?」
「さっき十夜に馬鹿って言われたの!あたし何もしてないのに!いつもいつも馬鹿って言いやがって!ムカツクー!」
「り、凛音ちゃん、顔顔」
「む」
十夜のせいで壱さんに見苦しい顔見せてしまったじゃないの。
「壱さん、あたし十夜に女だって思われてないんじゃないかな」
「え、それはないと思うよ?どっちかって言うと気に入ってる方だと思うけど」
「えー、それはないそれはない。あれが気に入ってる子にする態度?ないない」
だって、顔面掴まれるんだよ?
気に入ってる子に普通あんな事する?
「でも、そうじゃなかったらあんな風に待ったりしないんじゃないかな?」
「へ?」
待つ?
ホラ、と目で合図する壱さんに振り向けば、先に行った十夜が階段の手摺りに凭れてこっちを見ていた。


