「あ、凛音ちゃん」
「はい?」
「その券、使うの俺じゃなくて良いからね?」
「えっ」
にっこりと笑みを深める壱さんに笑顔のまま固まるあたし。
……あの、今、何て言いました?
「凛音ちゃんが膝枕して欲しいなって思う人に渡してね」
何か遠回しに『十夜に渡すんだよ?』って言われてるような気がするのはあたしの気のせいですか?
「あは。あはは………考えておきます」
取り合えず笑って誤魔化しておいたけど……。
無理でしょ!!
あの十夜だよ!?
あの十夜が膝枕だよ!?
有り得なさすぎてある意味笑える。
そりゃ十夜が膝枕してくれるんなら万々歳だけどさ。
どう考えても無理だよ。
だって、煌の時みたいに至近距離になるって事でしょ?
無理無理無理。
煌でも恥ずかしかったのに十夜なんか絶対無理だし!
考えただけで動悸が……。
「凛音ちゃん?どうしたの?」
「いや、何でもないです!妄想してたなんてそんな………あ、」
しまった。
「ぷっ。妄想してたんだ」
「いや、あの、その……」
もう、恥ずかしすぎて何も言えない……。
「凛音ちゃん、着いたよ」
「早く帰らなきゃいけないんじゃないの?」と笑いながらあたしの頭をポンポンと叩く壱さん。
あ、そうだった!
貴兄達の事忘れてたよ!
マズイ、急がなきゃ。
「壱さん、今日はありがとう!これも!」
手の中にある“膝枕券”を見せてお礼を言う。
「チャンスは一回だからね?じゃあまた明日。またドライブデートしようね」
「壱さんありがとう!」
手を振りながら車から降りると、壱さんはクラクションを鳴らして帰っていった。


